2024年12月24日(日)更新
【日程】 2024年 11 月 3日(日) 14:00~16:35
【場所】 室蘭工業大学 教育・研究1号館C棟C107号室
14:00~14:15 ごあいさつ・基調講演 「家で死ぬことは難しいのか」 皆川 夏樹
14:15~14:55 「死ぬ場所としての、病院」 調 恒治
14:55~15:10 「死ぬ場所としての、施設」
グループホームねねむ 施設長 加茂 智美
15:10~15:50 「死ぬ場所としての、自宅」 立川 真
15:50~16:35 質疑応答/シンポジウム 「家で死ぬための工夫」
調恒治(左)一級建築士/APECアーキテクト/医業経営コンサルタント 1964年福岡生まれ 1988年京都工芸繊維大学卒業 安藤建設入社 現在、安藤ハザマ環境建築設計部所属。医療施設、教育施設設計に携わる。 |
立川真(中)1965年大阪生まれ。1988年京都工芸繊維大学卒業、イトーキ入社、2021年までインテリア・プロダクト系デザイナーとして勤務。2021年に病を得て早期退職後は悠々自適・・・とはいかずに、趣味を楽しみながら「仕舞う」ことを考える日々を過ごす。 |
皆川夏樹(右)2013年登別にてみながわ往診クリニック開院。2021年伊達市移転。30年、在宅訪問診療に携わってます。 |
報告記事が遅くなりました。11月3日、文化の日に開催して、もう2か月弱。年も押し詰まって、やはり年内に始末をつけないと。
これまでも毎年書いておりますが、もちろん、「市民講習会」として、私のやっている、訪問診療、に絡むようなお話を、市民の方々と共に考えたい、ということが当会の趣旨ではありますが、同時に、非常に私的なこととして、私の旧友をあちこちから招いて、旧交を温める、ということもあります。今回は、京都での大学生活を共に安下宿で飲み明かして過ごした2人をお招きしましたが、2-3日前からやってきて、酒を飲みながらぎりぎりまで講習会の想を練り上げて、の「逸品」になりました。
大きなテーマは、ここ数年の流れ、と言いますか、もともとの自分の仕事としての「訪問診療」にやはり絡めて、と言いますか、・・・
人生の最期の時を、自分の住み慣れた家で迎えたい、とお考えの方が、どんな準備をしたらよいのか
ということになりましょうか。
少なくとも、過去2回の市民講習会では、こうしたテーマに関して、島根県の病院院長・東京の訪問看護師、をお招きして、「孤独死はいやですか?」「延命は希望しません」というタイトルで開催しました。
今回は、まったく医療系とは一見関係のない、建築・設計・内装、といった訪問の専門家を招いて、死ぬ「場所」を、どのように整えたらよいのか、ということを中心に、議論を進めてもらいました。
こう言うと、こじつけ、に聞こえるかもしれません。設計や建築と、人生の最期、と、何が関係があるのか。・・・でも、実は私、私たちの中では、学生時代以来、長らく折に触れては議論してきたことでもあるのです。特に、調君は、就職してから、学校や病院、といった建物の建築設計に関わっておられることもあって、20年程前、別の土地で私がやはり市民講習会を開いたときにも、演者として参加をしてもらったことがあります。
その時のテーマは、やはり私がずっと取り組んでいるテーマなのですが、「口から美味しく食べ続けるために、どのような工夫が必要か」ということでした。本HPにも別に掲載していますが、これは、「摂食嚥下障害」という分野になっていて、多くの場合、医療・介護現場では、高齢になってきて「むせ」ることが多くなってきた方に対し、「食べ物」や、「介助の方法」をどのようにしたらよいか、あるいは、「リハビリ」という点から語られることが多い問題なのですが、私たちはそれだけでは納得できず、「おいしく食べる」ためには、周りの環境、にも気を配るべきだろう、と考えたのでした。例えば、ポータブルトイレがすぐベッドの脇に置いてないか、とか、テレビの音がガンガンに鳴っていないか、・・・そもそも、病院(あるいは施設)は、「おいしく食べる」環境としてどうなのか、・・・というわけです。
調君には、その時にも、病院の建築設計をするにあたって、「おいしく食べる」という環境をどのように考えているか、という面から講演をお願いしました。
その頃から私は在宅医療に取り組んでいましたから、この「摂食嚥下障害」に関しても、やはり、自分の住み慣れた家で、好きなものを好きなように好きな環境で食べる、に如くはない、と考えていたわけなのでしょう。
そして、今回です。昨今、「人生会議」とか、「アドバンスケアプランニング」とか、という言葉で、人生の最期を、どこでどう過ごすか、ということを、それぞれの方が予め考えておくように、というようなことがよく言われます。すなわち、はっきり言えば、「病院に行かなくてもよい方は、自宅で亡くなる、という選択肢もありますよ」ということです。それでは尚更、その自宅をどのように「整えて」おいたら良いのか。あるいは逆にまた、病院、というのは、死ぬ場所として適切な場所なのか。さらにもう一つの選択肢として、いわゆる「施設」というのは、死ぬ場所として適切な場所なのか。病院、自宅、施設、それぞれが、自分が「死ぬ」「場所」として、どうあるのか、どうあるべきなのか、を、あらためて考えてみよう、と思った、というのが、今回の市民講習会の趣旨であります。
なお、私の友人のことばかり書いてしまいましたが、もうお一人、伊達市の「グループホームねねむ」の施設長、加茂智美さんの方から、グループホームでの看取り、について報告をしてもらいました。
以下、当日配布した資料を掲載しますが、ごく簡単に、各報告を一言ずつでまとめてしまって、結論めいたことを記してしまいます。
★死ぬ場所としての、「施設」: 全国的には、先に挙げた「人生会議」「ACP」など、国を挙げて勧めているような雰囲気で、ということは、施設で亡くなる、ということも、国としては推奨しているような節があり、事実、特に都市部など中心に、施設での看取りが増えている、ということは事実としてあります。しかし、西胆振地域に関して言えば、施設で最期まで過ごす、ということを受け入れている施設はまだほとんどありません。グループホームねねむさんは、施設での看取り、に取り組んでいる数少ない施設で、ということは、その環境設定などにも、様々気を配っておられる、という報告でした。逆に言えば、そこで亡くなる、ということに、何も気を配っていない施設で、最期まで過ごす、ということは、結構難しい、はずです。もし、施設を選ぶ、という際には、そうした視点で、見学など行うことも必要かと。・・・
★死ぬ場所としての、「病院」: これについては、まあ、予想はしていたことで、調君には申し訳ない部分もあったのですが、設計・建築の立場からはっきり言ってもらえたのは、「死ぬ場所、として病院の設計を考えたことはない」ということでした。これは、私自身、長らく病院で働いてきて十分身に沁みていることでもあります。少なくとも、一般的な「急性期」病院は、「死なないようにする場所」なわけで、結果として亡くなってしまう、というのは、例外的なこと、としてあります。そこで最期まで、ということをそもそも考える場所ではない、というのが、設計の立場からの意見でもありました。ただし、今は、「ホスピス」とか「緩和ケア病棟」とか、亡くなることを見据えた病院・病棟、というのもあるわけですが、これも、最初からそのつもりで設計・建築されているケースはごく少ないのではないか、ということでした。つまり、建築としては、もともと急性期病院として作られているものが、のちに、一部を「ホスピス」として使う、ということの方が多いだろう、ということです。
★死ぬ場所としての、「自宅」: 最後に、主に「内装」「インテリアデザイナー」の立場から、立川君に、最期を迎えるに当たって「自宅」をどんなふうに整えたらよいか、ということを話してもらいましたが、逆に、「そもそもが、『場所』をどうする、よりも、『自分が何をしたいのか』が先だろう」という、まことにもっともなダメ出しを食らってしまいました。というのも、彼自身は既に仕事を退いて、滋賀の実家でお母さんと二人で暮らしていますが、自宅を彼の好きなように手を入れている。いわゆるDIYはお手のもの、ですので、ちょこちょこした改修などは、ほとんど自分でできてしまう。庭に池を作ったり、トイレに水槽を置いてメダカやエビを眺めてみたり、好きな自転車いじりのための工房を整えてみたり、という実例をたくさん紹介してくれました。それらは、あくまで、自分が何が好きで、何をしたくて、死ぬときにどういうものに囲まれて死にたいか、ということがあって、の改修であって、一般的に「こうしろ」というものではないだろう、というわけです。しかし、誰でもが自分で好きなように改修ができるとも限らないので、そこは、遠慮なくプロに相談を持ち掛けろ、浴室を全面改修、など考えれば高くはつくだろうが、ちょこちょこした改修は思ったほどお金もかからんし、何より、そうした相談をプロにする、という習慣が、一般の人にはあまりない。遠慮なく、数ヵ所に相談をして、見積もりを出してもらって、ということをする過程で、本当にどんなふうに改修するのがよいか、も見えてくるし、プロの方だって、それが仕事であり楽しみであるので、熱心に相談に乗ってくれるであろう、ということでした。高齢になっての一般的な改修、としては、段差をなくす、だの、滑り止めを貼る、だの、は、どこにでも載っていることなので、一応はまとめておく、として、最後に掲載してあります。
では、以下に、当日の配布資料を掲載しますので、ご覧ください。
基調講演 / 資料
家で死ぬことは難しいのか
みながわ往診クリニック 皆川夏樹
2015 年3 月 「摂食嚥下障害への対応」
2016 年3 月 「東日本大震災から5 年~フクシマからのメッセージ」
2017 年3 月 「地域医療」ってなんだ?~佐久総合病院の医師を招いて~
2018 年3 月 「漢方薬・食・感染」
2019 年3 月 「在宅医療は必要か?」
2022 年10 月 「孤独死はいやですか?」
2023 年10 月 「延命は希望しません」
毎年、遠方の「旧友」をお招きして、それぞれの地域での「食」や「地域医療」にまつわるお話をこじつけてきました。今回は、大学時代の友人お二人を招いていますが、いずれも医療・福祉関係ではなく、建築・インテリア方面で仕事をしてきた方々です。
今回のテーマは、「死に場所」をどう整えるか、です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した2019 年を変化点として、「病院死が減少・在宅死が増加」しており、COVID-19 が日本の終末期医療に影響した可能性が示唆されました。
特に高齢者や、がんや老衰での死亡が変化していることが分かり、今後の在宅・終末期ケアの在り方に関する検討の足掛かりになることが期待されます。
2022 年政府統計
• 都市部ほど、自宅で亡くなる方は多い。
• 室蘭登別は、
・圧倒的に病院で亡くなる方が多い。
・施設で亡くなる方が少ない。
東京都立駒込病院緩和ケア病棟HP より
★入院中、家族と過ごすことはできますか? / ご家族の生活も大切にしていただきつつ、可能な範囲で患者さんのご希望に添っていただきたいと思います。ご面会は24 時間可能です。
★家族が泊まることはできますか? / 全室個室なので、病室にお泊りいただけます。また、家族室(3 室)をご利用いただくこともできます。
★外出・外泊はできますか? / 患者さんの状態が落ち着いていれば可能です。
★食事は何か持ってきてもかまいませんか? / 食べ物をお持ちいただくことは可能です。病棟のキッチンで調理することも可能です。
★喫煙はできますか? / 病院敷地内全て禁煙です。
★お酒は飲めますか? / 患者さんのみですが、他の患者さんのご迷惑にならないようにたしなむ程度であれば特に制限しておりません。
自宅なら・・・
好きなものを食べていい / 好きなものを飲んでいい /好きな音楽を聴いていい
好きなテレビ・ビデオを見ていい / 好きなゲームをしていい
誰と会ってもいい / 周りに好きなものを置いておいていい
(治療の手立てがなくなってから)・・・・・・どうしても、病院で亡くなる方を望むのなら、それはもちろん可能です。
でも、・・・
①今後、段々難しくなっていきます。
②前向きに、自分の家の方が、いいんじゃないですか?・・・・・
今日のテーマ
Ⅰ 病院は、死ぬ場所、としては、どうなのか?
Ⅱ (西胆振地域の)施設は、死ぬ場所、としてどうなのか?(そもそも看取りまでいられるのか?)
Ⅲ 自宅は、死ぬ場所としては、どうなのか?
・・・・・・「場所」を大きなテーマとして、どんな工夫をしたら、「死に心地がよい場所になるのか?」を考えてみたいと思います。
死ぬ場所としての、病院
調 恒治
調 恒治 一級建築士/APEC アーキテクト/医業経営コンサルタント 1964 年福岡生まれ 1988 年京都工芸繊維大学卒業 安藤建設入社 現在、安藤ハザマ環境建築設計部所属。医療施設、教育施設設計に携わる。 |
私は何者か
★建設会社の設計部にて主に医療・福祉・教育・居住施設を設計
・設計に関わった主な医療施設(南東北医療クリニック、南東北がん陽子線治療センター、新百合ヶ丘総合病院、大野眼科、参宮橋脊椎外科病院、かわぐち心臓呼吸器病院、渡辺病院、大阪陽子線クリニック、中部国際医療センター陽子線がん治療センター)
・設計に関わった主な福祉施設(気仙沼三日町再開発:キングスタウン、キングスビレッジ)
・設計に関わった主な教育施設(慶應義塾普通部新本館、広島国際学院中学校・高等学校、日大東北高等学校、慶應義塾志木高等学校)
・設計に関わった主な居住施設(是道庵広尾)
私にとってのリアルな死
・皆川さんからの依頼を受け死に際のシーンをイメージしたが目の当たりにした経験は少なく、医療施設設計に関わっているにもかかわらず医療施設の死に場所としての側面は深く考えていなかったというのが正直なところ
・死の床に深く関わったのは3人の親類
・祖⺟のケース・・・⻭はすべて⾃前で92 で亡くなる10 カ月前までは食欲旺盛、誤嚥性肺炎をきっかけに胃ろう(9 カ月間)「なんも食べとらんのに生きとるバイ」、
・義⺟のケース・・・間質性肺炎(10 年間、酸素ボンベ1 年間)、兵庫の⾃宅で闘病生活、亡くなる前年の年末から春先まで入院、退院後⾃宅で数日過ごし亡くなる
・義父のケース・・・肺がん、1 月胃腸炎で入院し発見 亡くなる前年3 月に兵庫から⻑⼥の住む川⼝の⾃宅へ、好きなことをすべてやる(初代部⻑を務めた都内の私⽴中高の柔道部で稽古を見学し後輩へ説諭)、12 月入院2 月に亡くなる
死と向き合うための施設
・緩和ケア病棟(埼玉県⽴がんセンター東館)
・緩和ケア病棟(福井県済生会病院)
・ホスピス(聖隷三方ヶ原病院ホスピス)
・マギーズ東京
・基本的生活行為(食事、排泄、清潔保持、移動)の大切さ
⇒気仙沼三日町再開発:キングスタウンの設計思想
「死」と向き合う
・祖⺟のケース・・・家族との食事を楽しみにしていた祖⺟は、胃ろうによって寿命が延びることを望んでいたか?
・義⺟のケース・・・もう少し早く⾃宅に戻ることはできなかったか?ただし、死亡診断をした医師からは「お見事!」の言葉あり
・義父のケース・・・豪快な義父であったが、病室で「帰るね」と伝えると首を振っていた。
・死と向き合う人々にとって大切なのは、基本的生活行為・環境コントロールの⾃⽴支援、家族や医療スタッフの介助・付き添いを妨げないこと ではないだろうか
死ぬ場所としての、施設
グループホームねねむ(伊達市竹原町)
施設長 加茂 智美
当施設の特徴
★認知症対応型共同生活介護
認知症を有する方が、生活に必要な支援を受けながら生活を営むグループホームです。
3つのユニットに分かれており、各ユニットに9名 27名が暮らしている。
★ 平均年齢 91歳 64 歳~101歳 介護度 要介護1~5
私たちの運営するグループホームは利用者さんが生活を送る場所ですが、時には最期の時を迎える場所でもあります。
支援しているスタッフ
介護支援専門員 介護福祉士 認知症基礎研修を修了
グループホームでの暮らし
★認知症が進み、おひとりで暮らす事が難しくなり入居される方がほとんど。
★最初は家に帰りたい。という気持ちが大きいが、慣れてくると、気楽で楽しく暮らせるようになるようです。暮らし方は様々で、必要な時にスタッフの支援を受けながら、それぞれお好きな事をしながら暮らしています。又、土日には家にお帰りになるという、暮らし方をしている方もいます。
施設での看取りを希望される方が増えている
★入居された時は、お元気で活動的に過ごされていても、
★お年を召されると、食べられない 飲めない 眠ってばかり・・・ 看取りの段階に近づく。
★その段階のご本人は、
ここにずっと居たい。
なじみのスタッフ仲間と居たい。
医療行為が怖い。(非常に環境の変化に弱い)
★ご家族のご意向
住み慣れた施設で、落ち着いて最後の時間を過ごさせてあげたい。
延命は望まない。自然なかたちで。と希望される。
施設での看取りの特徴
★ひとりの〇〇さんではなくて 〇〇病の患者さんとして最期を迎える事になる。
★施設での看取りは、
長年培ってきた馴染みの関係性の中で、死の間際まで普通の生活ができ、ひとりの 〇〇さんとして最期を迎える事ができます。
ご家族とのお看取り
最期の時をご家族と一緒に過ごせるようにご家族用の寝具や、お食事の提供をしています。
ご家族が様々なご事情で私たちにお看取りを託された場合は、長年関わってきた馴染みのスタッフが泊まり込み最期の時に寄り添っています。
スタッフと思い出話しをされながら、穏やかに目を閉じられた方や、数時間前まで、会話ができる方がほとんどでした。その時一緒に過ごしたスタッフは、一緒に過ごせてよかった、と感動したそうです。
希望される場合は私たちとご家族でエンゼルケアを行っています。
建築の視点から考えてみると
★ご家族が泊まれるお部屋がない
(今までご家族が宿泊された事はなく、比較的状態が落ち着いているときに、ご家族がご 自宅へ戻られている間に息を引き取られる事もありました)
今まで7 名のお看取りをさせていただいて、最期の時間に付き添う事を希望されたのは、3 名 実際に最期のお見送りが出来た方が1 名でした。
★エンゼルケアについて
(スペースが狭い事と、洗面所や浴室が居室の外にあることで、ゆっくり落ち着いてエンゼルケアが出来ない事)
最近は葬儀屋さんがエンゼルケアを行う事が多く、ご遺体の変化など考えると、急いで施設を出なければいけなくなってしまう。ご家族が葬儀屋さんを手配して30 分から一時間で搬送される
★今までは、最期にご家族がお見送りをする事例が少ない事について、ご家族がご高齢(101歳だと子供さん80 歳)な事や、ご家族の関係性などのご事情と思っていましたが、「建築」という視点から考えてみると、ゆっくり休息する場所がないという事も大きな要因の一つとしてあると考えました。
又、今後、長年関わってきた私達で心を込めて、エンゼルケアを行いたいと思っています。個室なので、プライバシーは守られてはいますが、スペースが狭く壁側にベッドを置いているため、スペースの使い方など工夫も必要と思いました。
★入居者のみなさまは、よく頑張ったね、などとお亡くなりになられた方に敬意を伝える言葉を沢山かけてくださいます。
皆川先生が、「お通夜はみんなで一晩酒を飲んでワイワイ騒いであげるもんだ」とおっしゃっていたのを聞いて、そのような時間をつくれていたらな・・と後悔の気持ちになった。
★数々の課題はありますが、
終の棲家として、利用者様やご家族にとって、どのような空間が望ましいのかを考え、工夫を重ねていきたいと思います。
ありがとうございました。
死ぬ場所としての、⾃宅
⽴川真
立川 真 1965 年大阪生まれ。1988年京都工芸繊維大学卒業、イトーキ入社、2021 年までインテリア・プロダクト系デザイナーとして勤務。2021 年に病を得て早期退職後は悠々自適・・・とはいかずに、趣味を楽しみながら「仕舞う」ことを考える日々を過ごす。 |
「死ぬ場所としての、⾃宅」とは?
★どんな⽴地?・・・いま住んでいる所? 実家?
スマートシティ? ポツンと一軒家?
都市部/地方/海外?
★どんな家?・・・・⾃宅という位置付けの施設?
⼾建て/集合住宅?
持ち家/借家?
★どんな部屋?・・・好きなものに囲まれていたい?
介護仕様? ペットと一緒?
ユニバーサルデザイン = 差がなくて巾がある?
「⾃宅」にはモンダイ山積?
【環境モンダイ】
□介護できる部屋やスペースがない!
□家の段差をなくすなんてムリ! 床暖房もムリ!
■過疎地でスーパーが遠いのに免許返納圧力が!
⇒ 差をなくす・巾を広げるための見積もりを取る(複数)。
今暮らしている場所があれば、そのままでも何とかなる?
運転免許がないなら⾃転車。宅配という手も。
【経済モンダイ】
■老後4000万円問題(老後破産)? というかそもそも蓄えがない!?
■介護保険って何ができる?
■年金受給年齢の引き上げ?
⇒ 強制的に払わされてきた「保険」を使う時が来た。
計算したら、⾃宅がいちばん安あがり。
【健康モンダイ】
□歩けなくなったら? ボケたら?
□何かあってもすぐに対応できない? というか病院で死ぬのが普通?
□家族の介護が大変そうで本人もつらい?
□健康寿命が過ぎたら部屋で寝たきり?
□人生100年なら何年介護する・される?
⇒ ボケる・⾃由に動けなくなることが老化。
できなくなったら人を頼る。無理しない。
少なくとも、⾃宅の方が精神衛生面では楽。
何かあってそのとき死んでも悔いがないようにしておく。
【死後モンダイ】
□孤独死はイヤだ!
■葬式で家族に迷惑をかけたくない!
■家はどうする(相続でモメている)! 入るお墓は?
⇒ そもそも、死ぬ時は誰でもひとり。たとえ孤独死をしたとしても誰も困らないようにしておけば良い(遺品・資産・PC・ペット・家の事故物件化など)。
死後のことは、生き返ることができるなら真剣に考える。
まとめると、今からすることは?
「終の棲家」を決める(身体が不⾃由になってからでは遅い)
病院や施設は次の一手か最後の手段。
モノやコトを絞り込む ≒ 捨てる・売る・あげる・やめる
ある程度のカネを準備する(働く・資産運用・売却・保険・・・)
家族や親類縁者や医者と相談して(ACP)、頼る人としくみを決める(地域包括支援セ
ンター・かかりつけ医・ケアマネ・介護保険・⺠生委員・・・)。
ヒマならエンディングノートでも書いてみる。
「死」を受け入れたら、あとは楽しむ(楽しめるようにする)。
いや、それらも大事だが、何かが足りない気がする?
⾃分は今、本当は何をしたい?
つまり・・・⾃分の「心」のことが置き去りになっているのでは?
「死ぬ」に欠けていること?
現代の日本では、「死ぬ」ことに「⾃分」が欠けている。
「こんな家で死にたい」というモノや環境も大事だが、
「こんな家で(最期を)過ごしたい」
というココロ = 覚悟・人生観・
思い・生きがい等があってこそ。
「場所」のほかには?
モノ 環境を変える
⾃分が最後にやりたいことをできる場所は⾃宅しかない!
そうできるように⾃宅(環境)を変える方が満足できる!
→ 日本は、お金が尽きて死ぬ時代に突入する ・・・ 冨島佑允
コト 行動を変える
後悔しながら死にたいと思う人はいないはず。ならば、
「死」を目指して⾃分を生き切ればいい!
→「生きている目的は死ぬことですよ」 ・・・ 無着成恭
ココロ 意志を変える
死は恐ろしいことでも忌避すべきことでもなく、人生の必然。
その人生の最期は⾃分が決める! 「医療」に丸投げしない!
→ 南ニ死ニサウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ ・・・ 宮沢賢治
と言われても、意志や行動を変えるって難しい・・・
だったら、カタチ(モノ・環境)から変えてみる。
まずは⾃宅!
「こんな家」の例
「こんな家」の例 -7・・・ というか「こんな家」の考え方や過ごし方。
□「家」よりも、その周りの環境や状況の方が重要。海と美味しい居酒屋と鮨屋と中華屋と焼肉屋と呑み友達。家は狭くて平屋で良い(あまりこだわっていない)。
・・・現在は妻と息子との3人暮らしの60 代男性の話。
□人が満足して逝けるかどうか?に対して、「場所」としてできることはほとんど何もない。人間関係や本人の気持ちの方が大事だと思う。
・・・年に数回、1人暮らしの⺟親の様子を見に帰省する50 代⼥性の話。
□死期は分かっていて覚悟もできていた。⾃分のものを減らす作業をしながら思い出などを語り、ほぼ片付けた。最期の最期だけ救急車で病院へ。家族としては後悔もあるが、本人は満足して逝けたのでは。⾃宅の改修等は特になし。
・・・親の身の回りの手伝いをしていた娘(60 代)の話、死因は誤嚥性肺炎。
□脳梗塞で半身不随だったため、玄関に手すりと階段を新設。寝室は畳と布団からベッドに変更。2階にあった⾃室は1階へ。屋内の段差は手付かずのまま。最後は病院(緩和ケア)。
・・・夫を介護していた妻(70 代)の話、死因は癌。
ただし・・・その1
□⾃分や家族が死ぬときの医療・介護体制(特に健康保険と介護保険)の質や量はどうなっている? 現状の地域格差も更に開いていく一方? 看取りまでできる医者はどこにいる? 今後も続く少子高齢化に対して有効な対策はあるのか?
□マイナ保険証モンダイは本当に大丈夫か? ←↑要するに、国の方針や施策は?
□引っ越しや家の改修って実際はそう簡単ではない?
□介護離職者は年間10 万人以上(在宅か否かは不明)。⾃分が当事者になったらどうする?
その前に、選択肢はあるのか? いや、近いうちに「トリプルケア時代」がくるのでは?
□気候変動や災害の激甚化、戦争や紛争などで死ぬことに対する意識がどんどん変わる?
いわゆる終活・安楽死(尊厳死・⾃殺・・・)・葬式や墓および宗教・・・はどうなっていく?
ただし・・・その2
★⾃宅を改修する(引っ越す・新築する)際のポイント
□物理的な段差をなくす。 玄関の上がり框・部屋の扉の下框・浴室やトイレの床下がり等。
ヒトは5 ミリの段差でもつまづく。
可能な限り、屋内と屋外(玄関や勝手⼝のたたきとポーチ)・敷地と道路との段差も減らしたい。
□階段は使わない。 1階で生活を完結させる。 2階・地下・別棟・倉庫などに保管しているモノは順次減らしていく。
□温度差をなくす。 部屋ごとの温度差(特に居室〜廊下〜脱⾐室〜浴室)も、室内の床付近と天井付近との温度差もない方が望ましい。
床暖房や高性能の空調機(特にクーラー)なども効果はあるが、扇風機などで空気を対流させることも効果は高く、かつ省エネ。
□断熱工事をするなら、まず窓を2重(3重)ガラスに。 機能性フィルム・カーテン等を使っても効果はそれなり。 天井裏の断熱材は効果大き目。木造なら入り隅もふさぐ・埋める。 外壁は外断熱が有効。
□寝室をトイレの近くに移す。 できればリビングも。 介護の3要素「食べる・出す・寝る」場所は近い方が明らかに便利。
□廊下は1200 以上、出入⼝は800 以上の有効巾を目標に。 不可能なら、廊下を部屋の一部に取り込む(= 壁を撤去)・扉を枠ごと撤去することも検討する。
□よく使うモノは、⽴った時の腰〜目の高さに置く。 奥行き方向も、手が届く範囲に。胸より下は抽斗(スライドレール)、胸より上は両開き扉(180°開き)が使い易い。膝より下と頭より上はできるだけ何も入れない。
□部屋の扉は引き⼾にする。 どうしても開き⼾なら折れ⼾で。 可能なら撤去。
扉の把手は握り玉ではなくレバーハンドルや引手で。
□照明器具は、シーリング(天井面に付けるタイプ)照明+手元照明で。 シーリング照明は
壁のスイッチで操作できるようにする。
なお、シーリング照明は天井面が暗く見える。
□床面は、足の感触や感じる温度・転倒時のリスク・心理面などからカーペットが良い。 タイルカーペットならメンテナンスも比較的簡単。 メンテナンスだけを考えるとビニル系やフローリング。
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